■木の花ファミリーとの出会い
大学を卒業した後に阪神大震災が起き、神戸で1年間被災地支援の活動を行っていました。その後、環境NGOや国際協力機関などで働き、東京学芸大学で環境教育の研究員の仕事をしていたときに「木の花ファミリー」と出会いました。訪問し、移住したいと思いましたが、その思いがかなったのは3年後でした。3月11日以降、「文明全体の転換が必要」と感じ、木の花ファミリーで新しいコミュニティのあり方や世界観を探求したいという思いが強くなったのです。
■木の花ファミリーの特徴
木の花ファミリーは、必要最小限の資源で最大限の精神的な欲求を満たそうとしている場所で、世界的にみても、あまり例のないコミュニティです。現在のメンバー数は77名。
このコミュニティができたのは1994年。場所は静岡県富士宮市です。創立時は20名でスタートしました。当時は「木の花農園」と呼ばれていました。富士山には「木花咲耶姫(このはなのさくやひめ)」という神様が祀られています。「木の花」の名前はこの神様からいただいたものです。
■木の花ファミリーでの生活
昨年から「農事組合法人」という法人格を持つことになりました。木の花ファミリーは、「得られた収入を大人全員で平等に分配する」という経済システムを導入しています。主な収入は農産物の販売によって得られています。それらを平等に分配。1人当たりの配分額は年間50万円前後です。これがメンバー1人あたりの年間所得になります。木の花ファミリーで暮らしていると、生活のために必要なお金は、年間24万円くらいです。子供の養育費もここから出しています。
所属メンバーは各自の得意分野を活かし役割を担っています。農業、加工品生産、家事、子育て、芸術活動、IT関連など様々な仕事をしています。農業主体のコミュニティなので、農業(畑、田んぼ)関連の担当者が多いです。
■木の花ファミリーの農業
農業は無農薬有機栽培で行っています。野菜は88品目(217品種)、お米は11品種作っています。面積は、畑8ha、田んぼ8haです。田んぼは100枚くらいの枚数があります。基本的に地主さんから無償でお借りしています。外部からお手伝いにこられる農業ヘルパーさんもいらっしゃいます。もし皆さまにヘルパーで来ていただけるなら心から歓迎いたします。食事と宿泊場所を無償で提供させていただいています。
田んぼや畑に農薬を使いません。土壌の微生物を大切にし、食べ物を口にする方のことを考えているからです。土づくりのため、「ぼかし(微生物)」をまいています。「EM」をベースとして独自培養した菌「木の花菌」を使っています。
鶏舎には600羽くらいの鶏がいます。養鶏場も手作りです。養蜂も行います。抗生物質は極力使用せず、「木の花菌」を散布することによって蜜蜂の健康を保っています。
■木の花ファミリーの食事
木の花ファミリーでは、油、塩、砂糖を除くほとんどの食べ物を自給しています。味噌と醤油も伝統製法で自給しています。食事はみな旬のメニューです。木の花ファミリーではお肉は食べません。理由は環境問題と水・食料問題への配慮からです。食べるお肉を作るため、大量の水と牧草が必要になります。できるだけ環境負荷が低い食べ物を選びたいとの思いがあります。また精神性を高めるために菜食の方がよいとの考えもあります。
近隣の方や団体から依頼され、お弁当をつくることもあります。お菓子も作っています。とても美味しいです。木の花ファミリーでは毎日16:00におやつタイムがあります。
■ ■木の花ファミリーの精神性
木の花ファミリーには、有名なモットーがあります。「畑を耕す前に、心を耕せ」です。「心ができていないと、よい農業はできないよ。まずは自分の心を見つめて、成長させていこう」、そんなことを基本的な考え方として持っています。環境に配慮したエコビレッジとして知られていますが、日々こころの修行を行っている場所でもあります。
自然を見ると、花や動物など様々な個性があり、それらが溶け合って全体として調和しています。木の花ファミリーも「各メンバーの個性を大切にしながら全体の調和をつくっていこう」との考え方を持っています。
■コミュニティの成長のために
ルールはありませんが、「正直、素直、信じる」という標語に「いただく」という考え方があります。この考えのもと、木の花ファミリーでは「大人ミーティング」というものを18年間毎日行っています。何か問題が生じたときには、メンバーで対話を行い、個の思いと全体の調和を考え、その都度対応を図るようにしています。
エコビレッジや大家族的なコミュニティが世界中で作られていますが、その多くが数年で行き詰り解散するケースが多いと言われています。その大きな原因は人間関係です。木の花ファミリーでは徹底した話し合いを行うことによって、調和的な人間関係をつくり続けています。
何か問題が生じる際、そこには原因があります。その原因を探っていくことで様々な気づきがもたらされます。問題ごとは気づきをくれる。だから問題ごとを隠さずに皆で乗り越えていこう、学びあっていこうと考えています。
■木の花ファミリーと外部の接点
このようなコミュニティは閉鎖的なのではないか、と言われることも多いのですが、木の花ファミリーは外部の方々との接点も多くあります。例えば有機農業研究会への参加、大学との連携、地元のNPOとの連携など様々な取り組みを行ってきました。
また、木の花ファミリーの暮らしを1泊2日で体験できるツアーを毎月行っています。もし興味がありましたら木の花ファミリーのホームページで内容をご確認いただきお申し込みください。
■佐野さんの考えるエコビレッジについて
エコビレッジを「命が生き生きつながっていく共同体」という定義をしています。この定義で考えれば「会社」もエコビレッジになれる可能性があると感じています。コレクティブハウスは「住む人同士の人間関係づくりに配慮した集合住宅」です。住人同士で話し合う時間が定期的に設けられています。都市型のエコビレッジと考えることもできるかも知れません。トランジションタウンは「『脱石油』を目指した活動を行う地域コミュニティ」、そんな特徴を持つコミュニティだと思います。
■これからの木の花ファミリー
木の花ファミリーの創設者「いさどん(古田偉佐美)さん」がこのコミュニティの精神的な支柱でした。彼が60歳になったとき、「いつまでも自分が中心でやっていくのは限界がある」ということで生前葬をしました。その後他の方にリーダーシップを分散させていきました。みんな、はじめは慣れずに苦労しました。現在もがんばっているところです。
第2回の里都づくりフォーラムでは、ゲストとして佐野淳也(さの じゅんや)さんをお招きし、静岡県富士宮市の「木の花ファミリー」のご紹介をしたいと思います。
持続可能な農村コミュニティとして注目されている「木の花ファミリー」。
何ひとつ土台のないところから自給自足を目指した農業を営みはじめ、現在では11種の米や200種を超える野菜や穀物を栽培しています。
(すべての作物を、農薬や化学肥料を一切使わない自然農法で大切に育てています。ほかにも自然卵や山羊のミルク、はちみつ、伝統的な手法で糀から作る味噌やしょうゆなど、日々の食卓にのぼるほとんどの食材を自給し、希望する方にお分けしています。)
木の花ファミリーには、代表がいません。ひとりひとりがユニークな個性を持った人として役割を持ち、助け合いながら、75人(2011年8月現在)が生活を共にしています。
病気や悩み、家庭不和、そして戦争や環境汚染など、世の中のさまざまな問題の根本は、すべて「人の心」にあるととらえている木の花ファミリー。
具体的にはどのような取り組みが行われ、どんな魅力があるのか、ゲストの佐野さんからお話をうかがう予定です。
きっと学びや気づきのある、ワクワクするひと時になると思います。
ぜひご参加ください!
■ゲスト(里都ナビゲーター):佐野淳也(さの じゅんや)さん
※木の花ファミリー http://www.konohana-family.org/
■日時:2012年2月20日(月)19:00-21:30ごろ
※開場は18:30を予定しております。
■場所:都内赤坂を予定
※開催場所の詳細は、参加お申し込みいただいた方にご連絡いたします。
■定員:50名(先着順とさせていただきます)
■参加費:2,000円
※参加費は当日開場にてお支払いください。
■主催:里都(さと)プロジェクト
■申込み方法:以下のフォームからご登録ください。
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